トップページ 読んで学ぶ フィンテック最前線 業界を変える技術トレンド 最新Techレポート スモールビジネスにこそ “勝機”あり!! 10年後の未来予測
業界を変える技術トレンド 最新Techレポート

スモールビジネスにこそ “勝機”あり!! 10年後の未来予測

クラウドサービスと従来のサービスの違い

「ワンストップ」「ワンスオンリー」「デジタルファースト」。
これは今、政府が主導する改革で盛んに登場する言葉です。
今、世の中はどのような方向に進もうとしているのか。
そしてそれがどうスモールビジネスに関係してくるのか。
それを解明するカギとなるのが、この3つの合言葉。
言葉の意味は本編を読んでいただくとして、
「クラウド完結型社会」に向けた少しだけ先の未来像をお見せします。

「クラウド完結型社会」のコンセプト

【STEP 1】webデータに強いクラウドだからこそできる会計自動化
 まずはクラウドの復習から。クラウドとは、ソフトをパソコンにインストールしなくても、ネットにつながっていればどこでも使えるソフトのことです。一番のメリットは、インストール型ソフトに比べて、webデータの扱いに圧倒的に強いこと。クラウド会計ソフトなら、インターネットバンキングやクレジットカード、電子マネー、通販履歴などのwebで取得できるデータを自動でソフトに取り込めます。領収書をスキャンして取り込むのもお手のもの。手入力を極力減らし、会計を自動化したい――これこそfreeeがクラウドソフトとして開発された最初の理由です。

【STEP 2】経理だけではない!バックオフィス全体を最適化
 本来、会計は経理だけのものではありません。営業部が作る納品書、資材部から回ってくる請求書、各従業員が使った経費なども会計の一部です。クラウド会計ソフトは、アカウントを付与すれば誰でも自分のパソコンからログインできるので、経費を使った本人が入力するというような最適化が可能。そこでfreeeは次のように考えました。会計ソフトは会計だけではなく、バックオフィス全体の最適化にもつながると。いわば、入力データが自動的に会計情報に変換される社内ネットワークです。バックオフィスがスリムになるうえ、リアルタイムで経営状況を確認できるようになります。

【STEP 3】あらゆるデータがクラウドでどんどんつながっていく社会
 会計を軸にしたネットワークは、社内だけでなく社外にもあります。企業や個人との取引、銀行や行政、会計事務所とのやり取り、あるいは社内ではあるけれど、あちこちに分散している支店のデータの取りまとめ。クラウドなら、これらの情報をいちいち紙でやり取りしたり、ローカルのデータベースから取り出したりしなくても、素早く、簡単にアクセスでき、利活用が非常にしやすいのです。大企業にも中小企業にも、政府にも個人にもクラウドの橋がどんどんかかって、欲しいデータに瞬時にアクセスできる――それがfreeeの思い描く「クラウド完結型社会」です。

ウチの会社のCFOは雲(クラウド)の上!?

じつはfreeeという会社は、創業時はCFO株式会社という名前でした。CFOとは「最高財務責任者」(chief financial officer)を表しますが、freeeの前身であるCFO株式会社は、Cloud Financial Officerの略です。つまり、CFO(最高財務責任者)の機能をクラウドソフトウェアやデータでカバーしようという発想から生まれた会社だったんです。

CFOは日本ではまだあまり馴染みがありませんが、財務戦略の立案・執行をおこなう責任者として、欧米では経営に欠かせない重要なポジションと位置付けられています。日本だと、「財務部長」だとか、社長を補佐する「番頭さん」のような人を思い浮かべるかもしれません。でも、CFOは単に財務のエキスパートであればよいというわけではありません。「営業」「管理」「システム」などさまざまな知見を持ち、財務戦略を経営戦略へと発展させて、企業経営の根幹を担う存在。欧米ではその地位は、CEO(最高経営責任者)と同様に確立されています。

「テクノロジーを使って、こうしたCFOの役割を中小企業にも行き渡らせたい」というのが、freeeという会計ソフトが生まれた最初のきっかけでした。

たとえばこれまで一般庶民は、お金持ちの人たちがやるように、自分の資産管理のためにプライベートバンカーを雇うなんていうことはできませんでした。ところが最近は、AIを利用して、アルゴリズムによる資産運用のアドバイスをしてくれるロボアドバイザーやアプリが登場し、まだお金のない若者や中流層でも手軽に投資のアドバイスが受けられるのです。それは、プライベートバンカーにお願いするのと同じ環境が、ネット上でなら断然手軽に手に入るということです。

同じように、これまで多国籍企業や大企業にしかなかったCFOという機能も、ネットを介せば、スモールビジネスや中小企業でも手軽に得ることができます。freeeがCFOの役割を果たすだけでなく、freeeを活用することで、これまでお願いしていた税理士・会計士さんがCFO的な役割を果たすこともあれば、会社で経理を一手に握る人がCFOになっていくこともあるでしょう。

「お金がかかる」とか「人がいない」という理由で手が届かなかったユーザー層にも、サービスを行き渡らせることができる――それがクラウドサービスを提供する最大の醍醐味だと思います。

パッションとスキルがスモールビジネスの強み

ところで、みなさんはスモールビジネスの「強み」とは、何だと思いますか?

じつは、freeeの代表、佐々木もスモールビジネスを営む家庭に生まれました。彼の実家は祖父の代から美容院を経営しており、祖父はいろんな工夫をしながら経営に当たっていたそうです。

実家を含むさまざまなベンチャー企業を見てきた佐々木が思うのは、スモールビジネスは「情熱」と「スキル」ありきだということです。面白いと思うこと、パッションを注ぎ込めること、自分のスキルで人に喜んでもらうこと。スモールビジネスには、それをビジネスにしてしまった人が多いのではないでしょうか。

だからこそ、スモールビジネスが元気な社会は、社会そのものが活性化する。スモールビジネスは、社会にとっても非常に大事な存在なのです。

伝統工芸を守る職人さんにしろ、地域の人たちから愛される食堂にしろ、癒しを提供してくれるマッサージ屋さんにしろ、みんなが何かに情熱を持ち、スキルを高めることに熱心です。その反面、スモールビジネスを経営している方々は、必ずしも「経営者」ではないかもしれません。経営より何より、自分がやりたいことのほうが優先されるからです。

でも、それこそがスモールビジネスの「強み」でしょう。「オレはこの工芸品を極めるんだ!」というのがスモールビジネスの出発点なら、経営を含むそれ以外の業務は、「やらざるを得ない」からやるだけの“付帯的”な業務にすぎません。だったら、それをもっと簡単にできないか。それができれば、その人にとって一番創造的な活動にフォーカスできるようになるはずです。

今はそれをテクノロジーが実現してくれます。自分1人で納得のいくものを生み出したいなら、その環境作りをソフトウェアが手伝ってくれます。反対に、人を雇ってビジネスをスケールさせたいなら、それもソフトウェアが助けてくれる。

それは、スモールビジネスが大企業並みに活躍できる社会を作ることにつながり、引いては元気な世の中、活気のある社会を作ることにつながっていきます。

そしてこれからは、「このアイデアを実現できたら面白そうだけど、お金がないからムリ」とあきらめていたようなことを、より簡単にビジネスにできる社会が訪れるはずです。クラウドのおかげで障壁が下がり、アイデアやパッション、スキルがあれば、誰でもビジネスを作れる環境になっていくからです。それこそが、freeeが本当に作りたい社会の姿です。

課題はクラウド化推進のための社会的なインフラ整備

とはいえ、freeeがそのためのプラットフォームとして機能するには、freee単体ではままなりません。まず、freeeがいろんなデータとつながれるように、すべてのデータがクラウド上で管理されているのが理想です。本来freeeは、単体の会計ソフトとしてではなく、ネットバンキングやクレジットカードなど、さまざまなデータとの“つながり”をも含めたサービスなのです。それがローカルで使うソフトとの最大の違いです。

すべてのデータがクラウド上にあれば、取り込みやすく、処理・加工がしやすくなります。クラウドソフトは、「関係するデータがクラウド上で管理されている」という社会のあり方が構築されてはじめて、最大の効果が発揮できるのです。

私たちがよく言うのは「ちくわ」の例です。あるデータをちくわの輪の中に通すと、別の情報へと変換されて出てくる。そのデータは自社の経営を把握するためにも使われれば、国への報告、投資家への報告にも使われ、さまざまなアウトプットになります。freeeはこのちくわの役割を担いたいと考えています。

でも、freeeの努力で何とかなるのは「ちくわ」の部分だけなのです。「ちくわ」の「穴」を通じてデータを出入りさせるのは、そのデータを持っている人たちによるからです。

取引先が請求書を紙で送ってきたら、スキャンが必要です。行政手続きが電子化していなければ、そのための作業が発生します。銀行がネットバンキングに対応していなければ、通帳を1行ずつ手入力するしかありません。関連するソフトウェアとfreeeが連携していなかったら、freeeにデータを取り込むためにデータをCSV形式でダウンロードし、加工してからアップロードする必要があります。最悪、その処理がうまくいかず、同じ情報を手入力することになったり……。

つまり、データのやり取りはfreeeだけで完結するわけではないということです。政府・企業のシステムや商習慣も含め、社会的なインフラや制度があってこそ、クラウドの利点が活かされる。

そのためにfreeeでは、クラウドサービスを提供する会社が主となった「Fintech協会」やインターネット企業が集まる「新経済連盟」といった団体を通して、社会インフラを整えるための提言などを政府に対しておこなっています。

日本の電子政府化への取り組み

日本でも電子政府への取り組みは2000年から始まりました。しかし、それは縦割り行政の弊害で、あまりうまくいきませんでした。当時はひたすら電子申請化を進めたのですが、電子化する申請「数」をゴールに据えたため、便利かどうかは関係なく、各省庁でバラバラの電子申請ができあがってしまったのです。すると、こちらの申請とあちらの申請で情報が7割も重複している……という事態が起こります。これでは二度手間になりますから、決して使いやすいサービスではありません。

それを受けて次第に浸透していったのが、「ワンストップ」「ワンスオンリー」という考え方です。手続きが1カ所で済み、一度提出した情報は再提出が不要ということです。今はマイナンバー制度によって、政府が運営する「マイナポータル」というオンラインサービスがありますが、それがまさにワンストップ・ワンスオンリーを目指すもの。たとえば引っ越しのとき、転出・転入届はもちろん、電気・ガスの住所変更、年金・健康保険の住所変更、自動車の登録変更がオンライン上で一括しておこなえるようになるのです。

これは個人が受けられるサービスですが、私たちがずっと意見を提出しているのは、法人手続きに関してもワンストップ・ワンスオンリーを実現してほしいということ。そのボトルネックになっているのは、やはり縦割り行政と、データ開放に積極的ではない慣習的な企業意識でしょう。さらには、改革を進めるうちに抵抗勢力がいろいろ登場し、中身のない改革になりがちだという側面もあります。

日本の電子政府の取り組みも、2000年からは大きな飛躍を遂げました。今では国としても、データは保護するだけでなく、積極的に活用していこうという方向に向かっています。

たとえば、銀行口座の情報は銀行が持つデータですが、ユーザーの行動履歴・資産でもあります。ユーザーがデータをよりよく活用するために、その情報を別のサービスで利用したいと思えば、当然の権利としてそれを可能にするべきでしょう。私たちは国民の権利として、その意識を一般的なものにしていくことが大事だと考えているのです。

もちろん、国としてどういう方針が一番よいかは、産業政策にも関係するため、なかなか答えの出ない問題です。でも、日本企業と個人にとって、一番使い勝手がよいのはどういう方法なのか。それを考えれば、やはりデータを活用できる環境を整えることが急務でしょう。 今や、世界全体がそうした方向に向かっていますが、日本はまだ遅れている部類なのです。ですから日本でも、10年後にはワンストップ、ワンスオンリー、デジタルファーストが当たり前になっているかもしれません。それは私たちの働き方、企業のあり方を変えていくものになるはずです。

関連コラム

一企業が国民の行動を支配する!?アリペイのデータ集約戦略
日本はエストニアに続けるか?電子政府化が見せる未来像


Profile

木村康宏

東京大学法学部卒業。野村総合研究所を経てfreeeに参画。現在は、電子行政や金融インフラを始めとする社会のテクノロジー活用基盤形成に向けて、情報発信・提言活動に取り組む。

業界を変える技術トレンド 最新Techレポート一覧

クラウド完結型の「業務フロー」構築の極意 STEP 3

クラウド完結型の「業務フロー」構築の極意 STEP 3

強い組織になるためには、既存の業務プロセスをそのままクラウド化すればよいというわけではありません。重要なのは、「何」を「どう」したいのかを見極めて改善設計すること。それに最適なのがフィット&ギャップ分析なのです。

2018.08.20 もっと読む
クラウドでビジネスは大きく変革する

クラウドでビジネスは大きく変革する

今や官民一体となって進められている日本のクラウド化。 freeeが創業当初から追い求めてきた「クラウド完結型社会」の構想がようやく実現できる基盤が整ってきたと言えます。そこでこの機会に、freeeではこれまでのミッションをバージョンアップ。 freeeが目指す社会への想いと夢をfreeeの佐々木が語ります。

2018.08.15 もっと読む