業界を変える技術トレンド 最新Techレポート

クラウドやAIで会計業界はどう変わるのか

クラウドサービスと従来のサービスの違い

freeeの佐々木と武地が、クラウドやAIによって世の中や会計業界がどう変わっていくのかを語り合いました。

スモールビジネスが有利な時代

武地:クラウド化によってスモールビジネスの価値が上がると、規模の経済が逆転していくような側面がありますね。

佐々木:これまでテレビや新聞に広告を出すことは、資本力のある大企業にしかできませんでした。今はインターネット広告の登場によって、クレジットカードとほんの少しのお金があれば、誰でも世界中に広告を出せる時代です。ソフトウェア業界も同様で、これまで何億円もかかっていた統合的なERPソフトと同じことが、クラウドやAPIによって安価で実現でき、中小企業でも圧倒的な業務効率化を図れるようになっています。テクノロジーの進化で、大企業と中小企業が持っている資本力の差がどんどん縮まっているんです。

武地:会計業界でも、以前は顧問先に高度なサービスを提供しようとすると、表に会計士さんや税理士さんがいて、裏では工場のように膨大な業務をこなす人たちが必要でした。相続やM&Aに特化した事務所をやりたいと思っても、やはり業界で大規模と言われる規模でないと、食べていくことはできなかった。でも、今は裏側の業務のかなりの部分を、クラウドやAIで処理できるようになっています。数十人を抱える事務所でないとできなかったことが、個人事務所でもやりやすくなっている。会計業界だけ見ても、スモールビジネスのままで強くなっていける世の中が到来したなと感じます。

佐々木:むしろ、小さいこと自体が強みであると考えるべきかもしれません。会社の規模が大きいほど、小さなイノベーションやオポチュニティではたいした意味がないと考えがちです。しかし、スモールビジネスでは、小さな変化でも重要な改革になったり、大きなインパクトになったりする。それを突き詰めていくことが、世の中を変えるような商品やサービス――つまり、新しいイノベーションへとつながるんだと思うんです。クラウド化が進めば進むほど、スモールビジネスが輝く社会になっていく。それは間違いありませんね。

これからの会計業界の役割は?

武地:クラウドやAIで業務の効率化が図れるということは、自身の専門分野や能力という付加価値で勝負しなければならないということでもありますよね。となれば、会計業界はこれまで以上に顧問先の収益が上がるソリューションを提供するという意識を持たなければならないと思います。一緒にビジネスをやっていてよかったと思っていただけるよう顧問先を導いていくことが、これからの会計業界のあり方かもしれません。

佐々木:まさに本誌のタイトルでもある「経営パートナー」ということですね。

武地:自動化が進めば、これまで10時間かかっていた仕事が9時間、8時間、7時間……と減らせます。そうすれば顧問先に向き合う時間を増やせます。結果、顧問先にも喜ばれるし、自分の専門分野も伸ばせるんですよね。未来って、そういう変化の延長線上にあるような気がします。クラウド完結型社会を迎えると、それがクラウドツールだと意識すらしないような時代になっているかもしれない。

佐々木:変化のスピードがどんどん早くなっていますからね。パソコンの保有率が25%を達成するまでには23年もかかりましたが、スマホはわずか3年です。テクノロジーやツールがどんどん変わっていきますから、仕事内容もどんどん変化していきますよね。会計業界に求められる役割も、変わっていくだろうと思います。

唯一、社長室に入れる業界

武地:一方で、クラウドやAIが進化すればするほど、自分たちの仕事が奪われるのではないかと危惧する声が会計業界にはありますね。

佐々木:たしかに、現場レベルの判断はある程度置き換わっていくでしょうね。武地:とはいえ、もちろんすべての業務が置き換わるわけではないと思うんです。適正な納税のインフラであるという会計業界の役割はおそらく変わりませんし、申告という制度があるかぎり、業界の根本的な価値は「専門家が見てくれているのだから安心だ」という信頼の付与にありますからね。信頼性はなかなか機械には置き換えられません。たとえ95%自動化されても、5%の信頼を誰かが付与しないといけない。100%自動化されて、すべての税務業務がなくなるという未来は、日本の申告納税制度下では、まだ簡単には来ないだろうと思います。

佐々木:そこは技術よりも法制度の問題になりますもんね。集計やチェックといった業務はいずれなくなるでしょうが、解釈の余地がない税制にならないかぎり、税理士さん、会計士さんが果たす役割は依然として大きいと思いますよ。

武地:よく言われるように、税理士・会計士さんは唯一、社長室に入れて、会社の財務状況も隅々まで知ることのできる存在です。それは今後も変わりませんから、「この人たちはさらなる価値をもたらしてくれるんだ」という世の中の信頼を勝ち取ることが、おそらくすごく重要なんじゃないかなと思うんです。

佐々木:先ほど武地さんの言った付加価値ですね。今までと同じことしかしないなら、報酬はどんどん下がってしまう。だから自分の強みは何か、どうやって経営者に価値を届けるかということを真剣に考える必要があるということですね。私だったら、個人事務所でマルチにやるのは無理なので、自分の強みや専門ジャンルに特化して、好きなことをやる道を選ぶと思います。

武地:もう1つ、中期的なスパンで考えると、とくにまだ今後何十年もこの業界でビジネスをしていかなければいけない若い方にとっては、数字を見て分析できるというのは大前提で、今後は経営者と対話して、会社の強みやカルチャーまで考慮できるような、コミュニケーション型のビジネスの力が求められるようになると感じているんです。

佐々木:そうですね。さまざまなデータがクラウドで可視化され、自動化されるなかで、税理士・会計士さんは、それをベースにビジネスを一緒にやっていける、本当の意味での相談相手という役割が求められるようになっていくんでしょうね。

アイデアやパッションが重要

佐々木:結局、クラウドやAIの進化って、アイデアやパッションやスキルという原動力があれば、誰でも簡単によいビジネスを作って育てられるプラットフォームなんです。

武地:ポジティブに言い換えれば、アイデアやパッションを持っていれば、幸せに生きられる可能性が高まっているということですよね。「こんなによい時代に生まれて、なんて幸せだろう」と考えられる人が増えてほしいし、そういう人こそが本当の意味で成功するんじゃないかなと思います。

佐々木:freeeが世の中を引っ張って、変えていける存在でありたいですよね。会計業界からもそう期待されていると思います。本当に。

クラウド完結型社会はスモールビジネスが輝く社会だと言ったけれど、業務の自動化が進むからこそ、次に何をするかの判断が重要です。それができなければビジネスが弱くなってしまう。アメリカではAmazonが伸びるほど小売業が潰れていくという現実がありますが、Amazonに置き換わらないようにビジネスをしている小売業者もたくさん存在しています。大企業に席巻されがちな社会のなかで、中小企業がちゃんと戦えるよう、「経営パートナー」であるという共通の意識を持って会計事務所とfreeeでタッグを組んで取り組んでいきたいですね。


Profile

佐々木大輔

freee株式会社 創業者・代表取締役CEO
一橋大学商学部卒業。博報堂でマーケティング戦略の立案に従事。その後、投資アナリストを経て、株式会社ALBERTの執行役員に就任。08年Googleに参画、アジアでのGoogleのビジネスおよび組織の拡大を推進した。12年freee株式会社を創業。

Profile

武地健太

freee株式会社 パートナー事業本部 専務執行役員 CPO 公認会計士
税理士一家に生まれる。あずさ監査法人で公認会計士としての経験を積み、ボストンコンサルティンググループで戦略コンサルティングに従事したあと、freeeにCFOとして参画。現在は「経済活動のログ」としての会計の可能性をパートナーの皆さまと追求し続けている。

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