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新時代の成長戦略 ローコストの真実

クラウドサービスと従来のサービスの違い

AI、クラウド、フィンテック。
テクノロジーが目まぐるしく進化していくなかで、変革の時期に差しかかっている税理士・会計士業界。今後、仕訳入力業務や申告業務が減っていくのは当然と見なされるなか、税理士1人あたりの企業数も減っており、競争は激化していくばかりだ。その一方で、テクノロジーと協働し、より生産的に働く道を模索して、すでに戦略的に動き出している会計事務所もある。この時代の流れはあなたにとって「救世主」となるか、はたまた「破滅への使者」となってしまうのか?
「変化」を味方につけるための新たな成長戦略に迫る。

「ローコスト・オペレーション」が新時代の共通キーワード

世の中には、士業という「資格」を持った税理士・会計士でないとおこなえない業務がたくさんある。それなのに、なぜ経営が厳しい事務所、今後の経営に不安を抱える事務所が増えてきているのだろうか。まずは経営論・戦略論を用いて会計業界の現状を構造的に分析してみよう。

会計事務所の多くは「負け犬」!?

会計業界をとりまくマイナスの経営環境は、大きく分けて2つある。1つは下の表にあるように、日本企業数の減少だ。会計事務所にとって、企業数の減少は即、顧客数の減少を意味する。マーケットが縮小すれば競争が激化するので、当然ながら報酬の低価格化も進む。
もう1つの要因は、大採用難時代の到来だ。そもそも定着率がよくない業界なのに、採用コストも人件費も増加。成長している事務所ではスタッフも増やす必要があるため、影響はさらに大きい。ただでさえ報酬が低下傾向なのに、収益まで圧迫される構造になっているのだ。

この状況を分析するとどうなるか。自社事業の状態や立ち位置を把握するための古典的経営分析ツールであるプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)に当てはめると、会計業界全体のマーケットは縮小しているため「市場成長率」が低く、ほとんどの事務所は中小規模なので「市場占有率」も低い―すなわち「負け犬」の位置にいるとわかる。事業をいくつも運営している大企業なら、「負け犬」からは撤退し、「金のなる木」で安定運営しつつ、「問題児」に投資して、「スター」に育てるという経営判断がされるのだが、会計事務所では撤退イコール閉業になってしまう。その場合、残る方策としては2つ。なんとかシェアを拡大するか、成長市場に移行するかしかない。

「負け犬」から脱する4つの戦略

シェアを拡大するには、より多くの顧客を惹きつけるサービスの設計と運用、宣伝とマーケティングが必要だ。一方、成長市場への移行については、業務の性質上、「会計業界」というマーケットを変更するのは難しいため、そのなかのニッチ・マーケットに絞って軸を変えるのが有効だろう。では、そのためにどんな戦略がとれるのか? 手始めの切り口として、これも古典的ではあるがマイケル・ポーターの基本戦略で検討してみよう。競争優位性を築くために、事務所が目指す方向性の大まかな指針にはなるはずだ。

すべての戦略に共有するのはローコスト・オペレーション

これまでと同様、むしろこれまで以上に、顧問先にとって頼りになる、そして頼んでよかったと思われる存在であり続けることが、結局は会計事務所の経営を改善、向上させることになる。しかし、人間が価値を感じる尺度が相対的である以上、変化や差別化は必要だ。そのための選択肢として4つの戦略は参考になるのではないか。
ただし、すべての戦略の前提にオペレーションのローコスト化の必要性が見えてくる。なぜなら、低コスト化で優位に立つパターン(A、C)ではオペレーションコストの減少を価格やマーケティング費に転換できる。独自の強みで差別化するパターン(B、D)でも、そこに邁進するためのリソースをローコスト化で捻出する必要があるからだ。

ここで改めて考えたいのが、会計事務所ビジネスにおける「ヒト」の役割だ。多くの事務所でもっとも割合を占めるのが人件費だが、採用難は全国的問題で1人あたり報酬を下げるのは難しい。AIの台頭で「ヒト」ならではの付加価値も変化してきている。つまり、オペレーションのローコスト化にあたり、一番難しくもあり、一番効果を期待できそうなのが「ヒト」の役割の見直しなのだ。
そのためには経理業務全体を見える化し、標準化し、標準化した業務を自動化していく必要がある。気を付けなければいけないのが、顧問先も同様に人材難であり、経理の担い手を「事務所⇒顧問先」に移行するだけの「自計化」は正しい選択ではないこと。また、「経理代行」も顧問先の経理業務の標準化は進むが、それだけでは不十分だろう。経理業務のうち、判断以外の要素を自動化する「無経化」を理想のゴールとして既存業務の改善を繰り返していくことが、最短でのローコスト化の進め方ではないだろうか。

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