トップページ 読んで学ぶ フィンテック最前線 業界を変える技術トレンド 最新Techレポート AI×仕業がこれからの企業を支える ~バックオフィス・イノベーション~
業界を変える技術トレンド 最新Techレポート

AI×仕業がこれからの企業を支える ~バックオフィス・イノベーション~

クラウドサービスと従来のサービスの違い
(左から)PwCコンサルティング:松崎真樹氏 / freee:尾籠威則 / 赤坂国際法律会計事務所:角田進二氏 / 弁護士ドットコム:橘大地氏 / サムライインキュベート:玉木諒氏

アメリカの大手法律事務所であるBaker & Hostetlerが破産法担当の弁護士としてAIを導入するなど、会計士・税理士に限らず士業全般にとって関心が高いAI。 2017年7月6日、それをテーマにしたイベントがサムライインキュベート主催で開催された。 ここでは、そのイベントで議論された興味深いトピックを6つ取り上げよう。

Q1 AIには何ができて何ができない?

「現在の労働人口の49%がAIで代替可能」という話がしきりと取り沙汰されているため、「AIって何でもできるんだ」と間違って認識している人は多い。このイベントでも、「AIには何ができて、何ができないのか」というテーマが最初に議論された。
強調されたのが、AIはデータに大きく依存するということ。そして、データの抽象化・圧縮化には限界があるということだ。 「データさえあれば、AIである程度のことができるようになる。だから、データの集め方というのがすごく大事。例えば、職人さんが感覚的に対応していることをAIがすぐできるようになるかと言うと、データが足りなければやはりできない」(角田氏・弁護士)。
その上で、AIでできることは大きく4つに分けられるという。「まず、限られた状況下におけるQ&A。そして認識・分類。膨大なデータの傾向を見ての未来予測。最後が異常検知」(尾籠・freee)。では、何ができないかというと、「AIにとっては、“正解”があるなどパターン化できるものは得意な一方、そのデータを判断してどういうアクションにつなげるかという意思決定や、人と人とのコミュニケーションのように感情を理解するのは苦手」(同)ということらしい。

Q2 士業という職業はなくなってしまうのか?

そこで次に議論されたのが 「士業は本当にAIで代替されてしまうのか?」。それに当たっては、興味深い論点がモデレーターの玉木氏から提示された。「機械化によって人間の仕事が減っていくのは、今に始まったことじゃない。昔から製造業などフィジカルな仕事は徐々に自動化されていったという経緯がある。なかなか置き換わらなかったのが知識産業だが、今の時代になって、そのなかでも単純作業が徐々にAIに置き換わってきているという流れがある」
それを前提とすると、今後、士業はどう変化していくのだろう。例えば、士業の資格を持ってベンチャー企業で働くというケースはアメリカでは当たり前になっている。「インターネットテクノロジーは社会の課題を解決するツール。これを士業という専門家が担っていくのは時代の必然」(橘氏・弁護士ドットコム)との意見のとおり、今後は日本でも士業がテクノロジーに積極的に関わるようになっていくと考えられる。
そもそも新たなテクノロジーが登場すれば、その周辺に新たな職域が発生し、テクノロジーを理解した上でのより専門的な業務も生まれてくるはずだ。いずれにしても士業が生き残っていくには、テクノロジーとは無縁ではいられないだろう。

Q3 AIに解を求める人が増えたら・・・?

単純作業がAIに置き換わっていくなら、「士業を頼ろうとするクライアントの層は二極化していくのだろうか」「安いサービスしか求めない人が増えたらどうするか」というのは、第一線で働いている人にとって大きな関心事だろう。会場の参加者からも、まさにその点について質問が出た。
二極化は避けられないと答えたのは弁護士の角田氏。「“10分1000円カット”のQBハウスと同じで、安くさっさと終わらせたいという人はAIに行くし、きちんとコミュニケーションをとってベストな解を選びたいという人は人間に行く」
一方、玉木氏はその二極化自体は悪いことではないと言う。「かつてコンピュータは、大企業など限られた人しかアクセスできないツールだったが、今は各家庭で持てるようになっている。その点から考えると、AIによる士業の代替というのは、個人など力を持たない人たちをエンパワーメントすることができる。それは社会全体としてはプラスになるのではないか」 これまで専門的なサービスの恩恵に与れなかった人々にも裾野が広がっていく。そう考えれば、たとえ人間によるものではなくAIによるものでも、未来はよりよいものになっていくと期待できそうだ。

Q4 freeeのAIはどうやって情報を集めている?

もう1つ会場の参加者から出た質問が、freeeやクラウドサイン(クラウド契約サービス)といったサービスでは、どのように情報を収集し、現在・将来はどのように活用していくのかということだ。
freeeが収集しているのは、金融機関の明細や証憑類、日々入力されるデータなどの会計情報だ。ただし、freeeはERPを指向しているため、単なる会計情報だけでなく、日々の業務データや、債権、債務データなども蓄積されていく。そこが他の会計ソフトとの違いだ。
「それをどう活用するかというと、まず仕訳の推測が挙げられます。今年の秋ごろには、銀行明細等のカタカナ表記から取引を推測し、自動的に消込ができるような仕組みを提供していきたいと考えています。また、入力ミスがあったときに、漏れやダブりがないかを案内するというところでもAIが役に立っています。このように、現状は主に業務の効率化という面でAIを活用しているのですが、今後は80万事業所という膨大なデータを活かして、各業界や地域単位で自分の事業所の状況を分析したり、ビジネスマッチングができるツールとしても使えるようにしていきたい」(尾籠・freee)

Q5 記帳はいつ完全にオートメーション化する?

領収書の山を見るだけでうんざり…という会計事務所の人間は多いと思う。参加者からも、「記帳や大量の領収書のファイリングは“人間のやることじゃない”と感じてしまいます。オートメーション化されるのはいつでしょうか?」との質問が出た。
それに対し、freeeの尾籠は「1、2年後には、スキャンさえすれば記帳がすべて完了するという世界を作っていきたい」と力強く発言。例えば、ニュージーランドでは「ゼロ」という会計ソフトによって、4~5年ほどで中小企業のクラウド化が劇的に進んだ。しかしそれは、日本とは比較にならないほどインターネットバンキング(IB)の浸透率が高いからだという。
「日本の中小企業のIB採用率は3割ほどという調査もあるなかで、私たちはそれをテクノロジーで解決しようと考えています。例えば、通帳をスキャンしてfreeeに送ればデータ化できる。あるいは手書きの領収書をスキャンしてfreeeに取り込めば、テキストデータに変換される。そういうサービスを、AIを活用してやっていこうとしている」
こうしたサービスが実現すれば、IBを使っていなくても、取引の登録は機械にやってもらえる。やらなくてもいい仕事が減るのは、そう遠い将来ではない。

Q6 テクノロジーをどう活用していくか?

最後に、パネラーの皆さんからテクノロジーの活用についてアドバイスしてもらった。「士業は絶対になくならない」と明言する橘氏は、「結局、“信頼”の源泉というのは、人間。とくに専門家が判断しているというところにある」と述べた。これはサービスについても言え、誰がお薦めしているのかというのが重要なのだそうだ。開発する側だけでなく使う側からしても、どのような人から支持されているかは、サービス選びの1つの指標となるかもしれない。
また、「ローテクとハイテクを組み合わせる」という視点が欠けていると指摘したのは、弁護士の角田氏。「AIに恐怖心を抱くばかりでなく、『AIとは何か』ということをちゃんと調べるのが大切。すると、『敵はAIじゃない、使う人の問題だ』と分かる。AIさえあればいいサービスというわけではなく、何と組み合わせていくか。人間性とも言えるかもしれないが、それをちゃんと磨いていくことが、我々が生存していく上で必要なのではないか」
さらに言えば、最新技術はAIだけではない。私たちは自らの人間性を磨きつつ、さまざまな最新技術を吸収して、どう自分たちの力に変えていけるかということを考えていかなくてはいけない局面に立っているのだろう。

Event Organizer Company Profile

Samurai Incubate Inc.(株式会社サムライインキュベート)

東京都品川区東品川2-2-28 タチバナビル2階

業界を変える技術トレンド 最新Techレポート一覧

クラウド完結型の「業務フロー」構築の極意 STEP 3

クラウド完結型の「業務フロー」構築の極意 STEP 3

強い組織になるためには、既存の業務プロセスをそのままクラウド化すればよいというわけではありません。重要なのは、「何」を「どう」したいのかを見極めて改善設計すること。それに最適なのがフィット&ギャップ分析なのです。

2018.08.20 もっと読む
クラウドでビジネスは大きく変革する

クラウドでビジネスは大きく変革する

今や官民一体となって進められている日本のクラウド化。 freeeが創業当初から追い求めてきた「クラウド完結型社会」の構想がようやく実現できる基盤が整ってきたと言えます。そこでこの機会に、freeeではこれまでのミッションをバージョンアップ。 freeeが目指す社会への想いと夢をfreeeの佐々木が語ります。

2018.08.15 もっと読む