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業界を変える技術トレンド 最新Techレポート

特別対談 フィンテックが変える!スモールビジネスと金融サービスの未来

クラウドサービスと従来のサービスの違い

2016年夏にfreeeと入出金明細のAPI連携をスタートさせた住信SBIネット銀行。
創業から10年、個人のお客様を中心に右肩上がりに成長してきましたが、フィンテックの登場を受け、 新たなマーケットへの挑戦を始めました。それがスモールビジネス市場。
freeeとの連携でどのような未来が見えてきたのか、お話を伺いました。

円山 法昭 (写真左) 住信SBIネット銀行株式会社 代表取締役社長
神戸大学経営学部卒業後、東海銀行(現三菱東京UFJ銀行)を経て、イー・ローン(後のSBIホールディングス)に入社。日本初のモーゲージバンク立ち上げ等に携わり、14年住信SBIネット銀行社長に就任。
佐々木 大輔 (写真右) freee株式会社 CEO Co-Founder
一橋大学商学部卒業。博報堂でマーケティング戦略の立案に従事。その後、投資アナリストを経て、株式会社ALBERTの執行役員に就任。08年Googleに参画、アジアでのGoogleのビジネスおよび組織の拡大を推進した。12年freee株式会社を創業。

置き去りにされた中小企業への融資

佐々木:法人、とくに中小企業の顧客セグメントに、より力を入れていこうと決められたきっかけはありますか?

円山氏(以下敬称略):まず社会的な問題として、個人事業主を含めた中小企業が十分な金融サービスを受けられていないということがあります。通常、銀行が法人融資をするとなれば、担当者がつき、企業に訪問して決算書を預かりながら、社長の人となりから資金繰りまでを総合的に判断する時間が必要です。その審査には最低1か月はかかるでしょう。となると、スモールビジネスでは労力のわりに融資額が小さく、採算がなかなかとれないのが現実なのです。
2000年前後、メガバンクを中心に「スモールビジネスローン」というサービスが登場したことがありました。これは担当者がつかず、郵送だけでローンができるという仕組みです。ところが不正や詐欺が横行し、結局立ち行かなくなってしまった。真面目にやろうとするとコストに見合わず、コストをかけずにやろうとすると与信コントロールができない――「スモールビジネスのマーケットはうまくいかない」というのが銀行業界の定説だったのです。
しかし、ここにクラウド会計サービスが登場しました。デジタルであれば、非対面でも正確な情報をリアルタイムに集められる。しかもローコスト。フィンテックという新しい技術の登場で、スモールビジネスへの金融サービスが実現できる環境がようやく整ってきたわけです。

佐々木:今、世界中でフィンテックが増えていますが、その投資は消費者向けと中小企業向けに集約されていて、大企業向けというのはまずありません。ここはもう十分に回っている。フィンテックの進化によって、これまで置き去りにされてきた中小企業にも、解決策が増えてきたと。

円山:まさにその通りです。全国で300万社あると言われる中小企業のなかで、本当の意味で融資を受けられているのは、おそらく20~30万社、1割程度でしょう。僕らは残りの270万社を対象にしたい。普通の銀行が普通に貸している企業は、ある意味、僕らの対象じゃないんです。
中小企業の会社生存率は、設立から10年でわずか1割程度です。その要因はいろいろあるでしょうが、そもそも初期の段階でファイナンスをしっかり受けられなかったために成長のチャンスを失い、事業継続できなかったケースも多いと僕は思う。中小企業が強くならないと、日本経済はよくなりません。中小企業が元気になってこそ、経済の活性化や地方創生もできる。そのために、どの銀行でもできていないことを、われわれがやるべきだと考えているんです。

データ連携で即日ファイナンスを可能に

佐々木:その取り組みの1つとして、16年10月からトランザクションレンディングをスタートされたわけですね。

円山:はい。これは企業の日々の決済データなどをもとに、融資審査をおこなうという方法です。決算書の書類提出もいらないし、保証人や担保も不要となるので、通常の銀行サービスでは対応できないようなニーズにも応えられます。
ただ、そのためには生の取引データや預金残高情報、銀行預金移動情報といった、日々のお金の流れを見せてもらわなくてはいけません。freeeとの連携はその一環。顧客がfreeeのクラウド会計と住信SBIネット銀行の口座を連携させれば、われわれが正確な取引履歴をリアルタイムで見られるため、与信の精度が上がり、つねに融資のオファーをご提供できる商品が実現するはずです。使うか使わないかは置いておいて、何かあったらすぐに調達できる資金枠がすでにあるというのは、企業にとってもすごく安心感のあるサービスになると思います。(※freee ユーザー向けの事業性融資については検討中)

佐々木:つまり、新しい金融サービスという視点から見たとき、一番信頼性の高いデータというのは自動で入力されているものであると。そういうことですよね。

円山:そうです。もちろん、基本は銀行口座になりますよ。ただ、ATMやキャッシュで取引をされた瞬間、お客様がその後どういう行動をされたかがわからなくなってしまい、正しい与信ができなくなってしまう。ですから、いかに銀行口座をクラウド会計に自動連携するか。それが重要だということです。御社と一緒にスタートしたこの取り組みが広がっていけば、中小企業にファイナンスを提供してくれる銀行の数も増え、より資金調達がしやすい世の中になっていくと思います。クラウド会計にはそれだけのインパクトがありますね。

佐々木:私がベンチャー企業のCFOをしていたときに、経理担当者が請求書を1つ処理するのに、同じデータを何度も入力しているのを見て、そのほとんどを省略できるのでは、と思ったのが、freeeという会計ソフトを作ったきっかけなんです。

円山:同じことを何度も入力するという手間がなくなるから、入力ミスも減り、チェックする人もいらなくる。正確性も効率も格段にアップしますよね。

ATMはもういらない!?キャッシュレス社会の到来

佐々木:中小企業向けの金融サービスが充実していくなかで、今一番課題になっているものは何ですか?

円山:最大の課題は、法人におけるインターネットバンキングの普及率です。いちいち銀行の店舗に行くのは手間がかかるし、経理担当者を置かなきゃいけないというコストもかかる。インターネットバンキングを活用したほうが便利でコストが安いはずなんです。しかし、まだまだ利用されていない。

佐々木:個人客に比べて法人のオンラインバンキングの利用率が低いというのは、よく聞きます。

円山:そこで、僕たちはこの春から法人向けの優遇プログラムを始めます。当社での取引が活性化されたら、無料振込回数が最大20回までになる。また、総合振込の当日受付、当日振込のサービスも強化しました。さらに、住信SBIネット銀行の口座はキャッシュカードと一体型になったデビットカードが基本ですが、このデビットカードで支払っていただくと、デジタルで取引履歴が反映されるというメリットだけでなく、振込手数料がかからないうえにポイントまで付くんです。0.6%の還元率ですから、100万円を決済に使ったら6,000円が現金で戻ってきます。

佐々木:法人向けのデビットは珍しいですよね。まだ多くの経営者が気づいていない。僕たちは「クラウド完結型社会」というコンセプトで、インターネットさえつながっていればそこでビジネスが完結する社会を作っていきたいと考えているんですが、まさにそれに通じるお話だと思います。そう考えると、数年後には法人でもオンラインバンキングが当たり前という社会がやって来そうですね。すでにそれに沿ったオペレーションが組めていますから。

円山:個人の世界ではもう相当数インターネット化が進んでいます。今後は銀行業界も金融業界もインターネットでフルサービスを提供するのが常識になり、「リアルの銀行かネット銀行か」という対立構造自体がなくなるでしょう。カード決済や電子マネーの普及がさらに進めば、現金のニーズもますます減ります。一部、保険や投資、住宅ローンの相談など、どうしてもリアルでおこなったほうがいいものだけがリアルで残り、ATMすらいらなくなるかもしれない。将来はそういう社会になっていく。

クラウドに次ぐインパクト ブロックチェーン

佐々木:今、スウェーデンなんかでは、ほぼ100%キャッシュレス社会だという話を聞きますが、ここへきて日本もキャッシュレス社会に向かっているという印象を非常に受けますね。

円山:国を挙げてキャッシュレス社会を作ると安倍総理が言っていますし、われわれ金融機関もやはりそうしたいんですね。デジタルな取引になればなるほどコストも下げられるし、お客様によりよいサービスを提供できるようになりますから。その意味では、われわれが今とくに力を入れているのが、ブロックチェーンを使った送金システムです。当社と横浜銀行さんが中心になって、四十数行で「国内外為替一元化検討に関するコンソーシアム」というものを立ち上げて取り組んでいます。われわれネット銀行は普通の銀行に比べると振込手数料も安いですが、ブロックチェーンを活用すれば、それがさらに大幅に圧縮できます。

佐々木:素朴な疑問ですが、これまではなぜ手数料が高かったんですか? 例えばアマゾンで買いものをすると、送料がタダだったりしますよね。実際にモノが動いても送料タダ。でもお金って実際に動くわけではなくて、今やデータ上で数字が変わっているだけじゃないですか。

円山:従来のシステムではコストが積上方式になっているんです。つまり、いろんなフィーを上乗せせざるを得ないので、従来のシステムを使うかぎり、安くしたいと思ってもこれ以上は下げられないんですよ。でも、ブロックチェーンなら、そのコストがほとんどかからない。とくに海外送金なんて、手数料が高いだけじゃなくて、着金するまで何日もかかっていたところ、ブロックチェーンなら瞬時に届きます。これはフィンテックの進化のおかげですね。インターネットだけではそこまでできなかったけれども、ブロックチェーンによって本当の意味で金融システムの価格破壊が起きる。銀行業界における革命は、おそらくこのブロックチェーンから生まれると思います。

佐々木:それは本当に興味深いお話です。

円山:先ほどのアマゾンじゃないですが、実際にコストがかかっていても、彼らは無料。それは、本来あるべきサービスを提供するために必要なコストと割り切っているということですね。となると同じような発想で、振込や決済にかかる費用は、お客様との取引を活性化するための1つの必要コストだと割り切る銀行もいずれ出てくると思います。

佐々木:銀行にも戦略の選択肢が増えていく。

フィンテックで変わる金融サービス、変わる会計事務所のスタイル

円山:フィンテックは金融ビジネスのアンバンドリング化と言えると思います。今後、銀行は金融サービス・機能は提供するけれども、ユーザーとの接点であるUI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)の部分はフィンテック企業が担当するようになり、銀行はいわば裏方になっていくでしょう。ぼやぼやしていると、銀行はフィンテック企業に先を越されていってしまう。
反面、さまざまな企業が連携することで、今後ますます効率的な金融サービスが誕生してくると思います。分業したほうがネットワーク効果が広がり、コストも下がり、よりユーザーに便利なものが提供できることが証明されていますから。
今まで銀行は、営業して顧客を獲得し、金融サービスを提供して最後回収まで含め、すべて自分たちでおこなってきました。それがもう時代に合わなくなってきた。だからアンバンドリング化の波にうまく乗って、最適な形でフィンテック企業等々と役割分担ができた銀行のみが生き残れる世の中になると僕は見ています。

佐々木:そのアナロジーは、会計事務所経営にも通じるものがあるかもしれませんね。まず、今までは事務処理中心だったのが、クラウド会計によって事務処理がなくなる。そしてネット銀行を活用した資金調達支援など、会計事務所の役割はますますコンサルティングやアドバイスへとシフトしていく。しかも、これまで資金調達が難しかったスモールビジネスにもそのアドバイスができるようになる。会計事務所にとっても、顧問先企業への提案のオプションが増えていくはずです。

円山:企業は本業に特化し、会計事務所は事務作業から解放されて、コンサルティング的なサービスにシフトしていかなきゃいけないということですね。日本の将来のためにも、経営者は賢くあらねばなりませんから、ぜひ会計事務所の方にはそのためのアドバイス・サポートをして、経営者の金融リテラシーを上げていただきたいと思います。とくに、ネットバンキングを含めた便利な金融サービスを使うことで、コストが下がって、より本業に集中できる環境が作れることをもっと啓蒙していただきたい(笑)。

佐々木:インターネットからクラウド、そしてブロックチェーンと、われわれを取り巻く環境はどんどん変化しています。それによってどんな社会が訪れるのか、楽しみですね。

Company Profile

住信SBIネット銀行株式会社

東京都港区六本木1-6-1泉ガーデンタワー18階
2007年9月の開業以来、「どこよりも使いやすく、魅力ある商品・サービスを24時間・365日提供するインターネットフルバンキング」を合言葉に成長を続け、現在は個人顧客を中心に口座数270万口座、預金総額4兆円に到達。2016年10月には事業性融資サービス「レンディング・ワン」の提供を開始するなど、法人顧客向けの商品・サービスの拡充にも注力している。

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