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海外動向レポート

会計事務所なら知っておきたい クラウド時代の新常識

クラウドサービスと従来のサービスの違い

はじめに

突然ですが、「ERP(イーアールピー)」をご存知でしょうか?ERPは企業の人・物・金を管理する業務ソフトを統合した大企業向けのシステムで、社内での情報共有を効率化し、業務を高速かつ迅速化することができます。 筆者の前職(売上規模:2,000億円/年、従業員規模:2,000人で国際取引がある製造業の経理)ではERPを活用することで、専門的な会計処理を除き、経理で仕訳登録することなく帳簿が自動で出来上がり、第一営業日に月次決算を締めていました。では、このような状態になると経理は不要になったのでしょうか?

経理の一番の仕事は、仕訳入力をすることではなく、仕訳を意識しなくても会計帳簿を効率的に作成できるようシステムを組むこと

ということが筆者の先輩の言葉で、経理は社内コンサルへ変わると同時に、税務や経営管理、資金管理などへ業務範囲を拡大し、必要とされ続けていました。

最近では、クラウドサービスが普及することで、欧米の中小企業向け会計ソフトもERPのように自動で仕訳登録をするものが主流となり、それに伴い、経理や会計事務所の役割も変化・拡大しています。日本の中小企業では未だに仕訳入力が中心ですが、今後、クラウド会計が浸透することで、経理と会計事務所の役割が変化していくと予想されます。 今回の「会計事務所なら知っておきたい、クラウド時代の新常識」では、アメリカのクラウド会計ソフト “QucikBooksOnline(QBO)” の紹介を通じて、今後の中小企業経理や会計事務所に期待される役割の変化を予想していきます。

QuickBooks Online(QBO)

“QuickBooks(クイックブックス:以下QB)”という会計ソフトをご存知でしょうか?海外(特にアメリカ)進出支援等をされている会計事務所・税理士法人の方であれば聞いたことがあるかもしれませんが、アメリカのIntuit(インテュイット)社が提供する、アメリカの会計ソフトを利用している中小企業のうち、約80%のシェアを占めるブランドです。

QBは、アメリカの税理士の人気スキル調査では5位(会計ソフト1位)にランクインしており、ユーザーだけではなく税理士業務に浸透していることがわかります。

今回紹介するのは、”QuickBooks Online(クイックブックスオンライン:以下QBO)”という、QBブランドのオンライン版(クラウド型)です。実際の操作画面を通して、1. QBOの特徴/2.アメリカの会計産業のトレンドを紹介します。なお、2011年から2012年にかけて、QBOのユーザーは28.1%増加した一方で、インストール型のユーザーは6.1%減少しており、クラウド型へのシフトが進んでいることがわかります。

http://quickbooks.intuit.com

http://quickbooks.intuit.com/online/

QBOの特徴

■ホーム画面

QBOにログインすると、以下のようなメニューが表示されます。

最近の海外クラウド会計ソフトでは「日常経理を行うことで記帳業務を省略する」ことを意識した画面設計が主流で、QBOでは、まず
● Customers(得意先)
● Vendors(仕入先)
● Employees(従業員)
ごとに取引先を設定します。その上で、”Transactions(取引)”というメニューから、取引先別の入出金管理を意識しながら日常経理を行うことで、会計データの登録も同時に行うことができるようになっています。

■Transaction(取引)

”Transactions(取引)” メニューをクリックしてみると、
・ Banking(銀行)
・ Sales(売上)
・ Expenses(経費)
というサブメニューが表示されます。

”Sales(売上)”機能で会計データの登録作業をしてみます。”Sales(売上)”メニューを開くと、右上に”New Transaction(新規取引)”ボタンが表示されるので、今回は一番上の” Invoice(請求書)“をクリックしてみます。 ”Invoice(請求書)“以外のメニューに関しても、経理業務で作成する書類等がメニュー名になっているのが特徴的です。(日本の会計ソフトで一般的な帳簿や伝票の形式入力はメイン機能としては用意されていません)

■Invoice(請求書)画面

“Invoice(請求書)” メニューでは、請求書の作成画面が表示されるので、一番最初に “Customer(得意先)” を入力し、支払期日や請求摘要を入力し、請求書を作成します。

■Banking(銀行)画面

“Banking(銀行)” メニューから銀行口座への入出金内容を確認することができます。海外の金融機関は会計ソフト向けに入出金明細の照会機能を公開している場合が多く、連携情報を入力しておくと、自動で入出金内容が取り込まれます。取引先からの入金を確認して、問題なければ“Match(消し込み)”をクリックすると、入金確認の処理も終わりです。

■Journal(仕訳帳)画面

“Journal(仕訳帳)”を確認してみると、日本の一般的な表示形式が違いますが、仕訳形式のデータが登録されていることが分かります。

今回は売上請求書を例として紹介しましたが、支払請求書を管理するだけで買掛金 (未払金)も仕訳登録まで行うことが同様に可能です。

日本の会計ソフトは複式簿記形式による記帳機能に特化しており、請求書作成や支払管理はエクセル等で別に管理される場合が多いと思います。しかし、記帳するために必要な情報の多くは経理業務の際に入力したものと同じなので、経理データから仕訳登録を行うことで、記帳業務自体をなくすことができるようになります。

アメリカ会計産業トレンド

QBOのような会計ソフトの出現によって、中小企業の決算申告に必要な仕訳の記帳業務がほぼ不必要になるので、アメリカでは単純な記帳代行業務はなくなりつつあります。
結果として、これまで記帳代行をやっていた人は、記帳業務はもちろん
・ 請求書の作成~送付、売掛金の回収~督促
・ 支払請求書の管理や給与計算、送金作業
・ 資金管理
等、経理業務全般の代行業務へシフトを行い、また、税理士・会計士(以下、税理士)は決算申告に加え、豊富な経験知識を活かして
・ 効率的な経理体制を構築
・ 資金調達や会計データを経営情報として有効活用
等のコンサルティングへ業務の幅を広げています。では、これは悲観的な変化でしょうか?

Point 1
Point 2

グラフは米1990年から2012年までの会計産業の実績をアメリカの大学が纏めたレポート*で、1枚目は雇用数を2枚目は賃金率を月別に表示しています。季節性はありますが、この13年間で雇用数と賃金率が増加傾向にあります。

これは、顧客がお金を払ってもよいサービスを会計事務所が提供するようになったからです。「本業に集中したい」事業者にとっての記帳代行は、支払や入金確認などの経理業務が社内に取り残されるため片手落ちでした。また記帳内作業自体には差別化要素ほぼないため、料金競争になるのは当然です。しかし、金融やクラウドサービスの発展により、経理業務自体をお願いしたいというニーズやもっと専門的なアドバイスを受けたいというニーズに会計事務所が応えれるようになり、また知識や経験による差別化が可能になると、料金は当然あげることは可能です。つまり、記帳業務が効率化されることは、会計事務所にとってはチャンスでしかないのです。

*Walden University “Understanding accounting industry employment trends: Implications for accounting education and career planning”

さいごに

日本でも記帳代行は時代遅れという考え方が広まりつつあり、自計化支援を行う会計事務所も増えています。しかし、最近流行りのクラウド会計ソフトも含め、中小企業向け会計ソフトの多くは複式簿記形式での入力が前提となっており、入力指導以上のサービスを提供できている事務所はあまり多くないのではないでしょうか?

クラウド会計ソフトfreeeは、QBOと同じく経理業務を行うことで記帳業務を行わない会計ソフトで、顧客の業務効率化支援に最適です。日本とアメリカとでは会計制度・税 制・商習慣が違うため、必ずしも日本の会計産業がアメリカのようになっていくかは確かではありませんが、サービス内容の差別化にお悩みの方は、freeeを使った経理業務の改善サービスを検討をしてみてはいかがでしょうか?

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