認定アドバイザーインタビュー

今、会計事務所業界がおもしろい!

今、会計事務所業界がおもしろい!
Advisor Interview
年々、競争が厳しくなっている……。AIにいずれ取って代わられる業界だ……。
会計業界でささやかれる未来は暗い。だが、本当にそうなのか? どうすれば勝ち残れるのか?会計事務所に特化したコンサルタントを提供している樋口さんに打開策を聞いた。

戦略を持つ会計事務所が成長する

会計事務所の経営環境はますます厳しさを増し、AIによってなくなる代表例として挙げられています。しかし、それは本当でしょうか? AIによってなくなるのは業務の一部であり、私はまだまだ企業にとって存在価値の高いビジネスモデルを創造できると確信しています。
会計業界は、日本の事業所380万社を約3万事務所で支援する「超シェア分散型業界」です。事業を営む会社のほとんどが、どこかの会計事務所に業務を委託しています。これほど普及率の高い業界はそうありません。
また、会計は日常的な業務であり、決算・税務申告は毎年のことで、かつ企業は顧問税理士を容易に変えませんから、顧問先を1件拡大することによる売上の蓄積効果は極めて大きい。さらに会計情報は経営上の改善点を発見できる大変貴重な情報で、そのすべてを見ることができ、悩める経営者と毎月面談できる。このようなプラスの要素を持つ極めて稀な業界です。
以上から、「独自の戦略」を持つ事務所が毎期120~130%の成長を実現する市場は十分に存在すると言えるのです。

戦略3つの方向性と多極化業界へ

業界が成熟したときには、必ずイノベーターが出現し、経営力のある事務所が市場を奪取していくという現象が起きます。今まではマーケティング力のある事務所がシェアを伸ばしてきましたが、今後はそれに加えて市場が望むサービスを提供できる、「企業が価値を感じる商品力」を持つ事務所もシェアを拡大していくでしょう。会計事務所の戦略には大きく3つの方向性があると思います。

①ローコスト拡大戦略
市場が望む機能に絞り込んでローコスト・オペレーションを実現して市場を開拓していく戦略です。これは開業まもない若い会計事務所様が一定の顧客ボリュームを確保するには有効でしょう。

もちろん、根拠のないローコストは継続できませんので、最大限のローコスト・オペレーションの体制や仕組みが鍵となります。ただ、正社員を雇用して成長経営を継続するには限界が出てきますので、どこかのタイミングで高付加価値化シフトする戦略が必要になる時期が来るでしょう。

②特化戦略
この戦略は、テーマ特化・業種特化・ステージ特化などに分かれます。
テーマ特化とは、資産税特化・事業承継特化・海外税務特化など、顧客が解決したい課題にフォーカスした戦略です。業種特化は、飲食・美容・建設といった業種に絞ったサービスメニューを整えてマーケティングを展開する戦略です。
ステージ特化とは、新設法人・成長期の企業・事業承継期の企業など、企業の置かれているステージで抱える固有の課題を解決できる仕組みや商品を持つ戦略です。
この特化戦略にも高付加価値化できるサービスモデルを盛り込まないと、生産性の低いモデルで終わってしまいます。

③経営支援型戦略
これはどの業種・ステージにも共通の経営支援を展開する戦略です。いわゆるMASを会計事務所のビジネスモデルに組み込み、黒字とキャッシュを増やす支援を持つ戦略です。
この戦略はもともと高付加価値モデルであり、かつ顧問先の成長とともに顧問料も上がることになりますから、高い生産性を保ちながら成長経営を実現することができます。

これらの戦略には選択肢が多く、今まで十分なマーケティング力を持てずに成長機会を逃してきた事務所にもチャンスが多いと言えます。その意味では、会計業界は「営業力による二極化」から「戦略による多極化」への時代になると思われます。

株式会社インターフェイス 代表取締役 樋口 明廣 様

Profile

樋口 明廣 氏

会計事務所系コンサル会社を30年経営したノウハウをベースに、会計事務所の高付加価値型拡大戦略と組織戦略の支援を展開。「経営支援型会計事務所」を提唱し、150事務所に経営支援(MAS)ノウハウを提供している。

ルーチンワークの超ローコスト化と正社員のやりがい・働きがい

どのような戦略を採択するにしても会計事務所で必ずハードルになるのが、時間不足・人材不足でしょう。
弊社の顧客事務所様でも経営支援型で高付加価値化を目指していただく際に、必ずハードルになるのが、今の稼ぎを支えているルーチンワークの工数です。新しい戦略や高付加価値業務にシフトする大前提として、この記帳代行・決算業務などのルーチンワークの工数の削減に向けた取り組みが不可欠になります。

この対策は3つの方向性がありますので別掲をご参照ください。
一方、優秀な人材の確保や既存職員様の定着・活性化にどう向き合うかも考えていくべきでしょう。これは、プライドの持てる仕事とプライドを感じられる報酬を可能にする戦略が必要だと思います。
プライドの持てる仕事とはいろいろあると思いますが、「本当に顧客の成長に貢献できている」と感じられる仕事もその一つです。私はすべての事務所が何らかの形で顧問先の黒字拡大・資金拡大に貢献する形でやりがいを感じて欲しいと願っています。それは「会計という経営を見える化できるコア・コンピタンス」を持つ会計事務所ならきっと可能だからです。また私が顧客事務所様におすすめする時間チャージは「1万円」です。「2012年経済センサス」によると、会計事務所の市場は約1兆3,400億円、会計業界で働く人は17万人弱ですから、1人あたり年間売上は830万円程度に過ぎません。仮に労働分配率を50%とすると、従業員1人あたりの年俸は415万円を払えるかどうか。

これでは優秀な人材が他業種に流出するのも理解できます。若い時期に力をつけるという位置づけならいいかもしれませんが、もし年齢と経験を重ねても年俸が400万ちょっとにしかならなければ、その状態に疑問を持ち転職する人も少なくないでしょう。
もし年棒を700~800万円に設定するとしたら、労働分配率50%として、必要売上は1,500万円前後です。1日8時間労働として、そこから会議や移動の時間を除くと、だいたい年間1,400~1,500時間になりますから、1,500時間で1,500万円の売上を達成するには、時間1万円のチャージが必要というわけです。 ちなみに、どの事務所でも総務系のスタッフがいるでしょうから、監査担当者のみの時間チャージおよび年間売上は、その2割~3割増しで計算することになります。
こうしたプライドの持てる「やりがいと報酬」を少しずつ実現できる方向で、事務所の中期的な経営戦略を練っていただきたいと考えます。

どうやって高付加価値にシフトするか?

会計事務所が高付加価値経営にシフトするにはいくつかのステップが必要です。弊社の顧客事務所では、3年ほどかけて体質や仕組みから変えていく取り組みをしていただいています。

①サービスのメニュー化とプライシング
会計事務所の従来型のビジネスモデルのなかにも機会損失が多くあります。 顧問契約という名のもとに顧客が言うままに何でも対応してしまい契約外業務に振り回されるという現象です。とはいえ、いきなりすべてを変えることはできませんから、まずは「メニュー化」と「プライシング」に取り組んでみてはいかがでしょうか。1つ1つのサービスをメニューにして価格を決めていくということです。すぐに契約内容の是正はできませんが2年ほどかけてコツコツ交渉すると確実に時間生産性が高まってきます。

②ルーチンワークの超ローコスト化
明らかにしたサービスメニューのうちルーチンワークについては、超ローコスト化する仕組みを作りこむことが大事です。すでに述べましたが、正社員がルーチンワークを一切おこなわず、高付加価値業務に取り組む時間を確保できる体制を構築する必要があるわけです。

③高付加価値業務にシフトする
従来サービスのメニュー化だけでは、機会損失はなくなっても高付加価値経営は実現できないのが現実です。経営支援サービスやオーナー個人向け支援サービスなど、今取り組んでいなくてもニーズがあれば対応する高付加価値メニューを開発し、メニューに組み込むことが大事です。 例えば、業種特化ならその業種の黒字拡大につながるKPIを提供して経営コーチング機能を持つのもいいでしょう。アーリーステージ特化なら、安定成長の為のビジネスモデル設計・資金調達・モニタリングなどによる成長経営支援で十分に付加価値が生まれます。 これらの経営支援メニューは、他の事務所との差別化のみならず、独自のサービスモデルの構築につながりますので、口コミ拡大による高付加価値な顧問先拡大にも大きな効果を発揮します。

事務所の現状にあった「経営戦略」を!

ご自身の事務所が最適な戦略を採択すためには、周りの事務所がどうしているかではなく「自分の事務所にはどのような戦略が最適か?」を考えるべきだと思います。 そのためには、以下のような分析をしてみていただきたいと思います。

①商圏構造:事務所の商圏内の企業数や業種構成、伸びている業界や企業の存在
②顧客構造:現顧問先の業種・規模、経営者の年齢、売上推移別構成
③競合構造:地域の同業者で着目すべき戦略を採っている先の有無
④営業構造:現在見込客を提供してくれるルート、今後の可能性のあるルート
④組織構造:職員・パートさんの税務・会計・IT・経営支援等に関する力量

これらをしっかり分析して最適な選択をすべきです。
もしかしたら、現状では「経営資源が不足」して「夢が描けない」とお感じの方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。現在大きな事務所になっている先生方のお話をお聞きしても、最初は皆さん、何もない状態から成長経営を実現してこられました。どの先生にも「戦略」があったからです。
現状を踏まえて、まず「あるべき姿」を描き、「ステップバイステップ」で取り組んでいただきたいですね。
多極化する業界のなかで、成功確率の高い独自の戦略プランを描いていただきたいと思います。

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