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認定アドバイザーインタビュー

人事労務と会計業務の掛け合わせで新しい付加価値を生み出す

人事労務と会計業務の掛け合わせで新しい付加価値を生み出す
Advisor Interview

フィンテックやHRテックの台頭で、業務フローに変化が訪れている会計業界。そのなかでいち早くERPシステムを導入し、多様な働き方と付加価値提案を実現している赤坂共同事務所に、現行のソフトや体制の問題点を聞いた。

リモートワークのサテライトオフィスで分業を実現

以前から戦略的に組織作りに取り組んできた税理士法人赤坂共同事務所。士業同士でチームプレイをするために、社会保険労務士事務所や司法書士事務所を併設しているほか、沖縄県名護市にはサテライトオフィスを設け、積極的に分業体制を築いているのだ。サテライトオフィスの設立はもう8年も前に遡る。
なぜ、赤坂共同事務所ではこうした取り組みを始めたのだろうか。代表の宝金さんはこう語る。

「以前は、税理士の本業である申告業務と記帳代行のような業務を同じスタッフが並行してやっていたんです。ときには、M&Aやデューデリジェンスを引き受けながら、通常の業務もやる。となると非常に負荷がかかりますから、現場は大混乱です。こうした問題を抱えていたものですから、もともと税理士・会計士の領域と、記帳代行や給与計算、請求書発行業務といった領域で、事務所の業務を分けたいと考えていたんですね。
そんな折、2009年にリーマンショックが起きました。上場企業やその関連会社がどんどん破綻に追い込まれるなか、M&Aの案件は増加する一方です。そこで、通常業務は通常業務できちんと責任を果たしつつ、大きなプロジェクトに人を集約するために、記帳代行や給与計算業務のアウトソーシングができるオフィスを名護に設立したわけです」

なぜ名護なのかといえば、宝金さんが沖縄好きというのもあるが、経済金融活性化特区でもあり、那覇よりも雇用がしやすいというのが決め手だったそうだ。現在は6人の女性スタッフがサテライトオフィスに在籍している。

「実際に運営してみると、東京から簡単に行ける場所ではないというのも、いい作用を及ぼしています。普段はテレビ会議やチャットワークなど、いろんなツールを活用して生産性の向上に努めていますが、もし簡単に行ける場所だったら、結局自分が動いてしまって、リモートで働いてもらう仕組みをうまく作れなかったような気がします」

システムの力と仕組みの構築で付加価値を提供する

名護にオフィスを設立するに当たっては、東京のオフィスと連携させるためにERPシステムを導入し、VPN(仮想的なプライベートネットワーク接続のこと。安全に企業の拠点間通信をおこなえる)でつなげるなど、大規模なインフラ構築もおこなった。
とはいえ、8年前の技術である。ERPシステムは宝金さんが期待したほどの水準には仕上がっておらず、「よく言ってバッチ(コンピュータに一連の手順を登録して自動的にデータを一括処理すること)」というレベル。

「やはり、効率性を上げながら付加価値の高いサービスを提供していくには、システムの力と仕組みの構築が必要です。クライアントから情報をもらったら、実際の作業の前段階でシステムに乗せてしまえば、その情報を他のことにも活用できますからね。それがERPの考え方です。ですから、かなりのコストをかけてERPを導入したんですが、freeeのことを知ったときは、“今はこんなに進歩しているのか”と驚きました。安価なのに、同じこと、もしくはそれ以上のことができる。クラウドシステムというだけでもかなり大きな違いがありますからね」

freeeの場合、申告業務を踏まえたうえで、記帳や領収書の管理、経費精算から銀行融資、勤怠管理や給与計算まで、一元的に情報を管理しながら、バックオフィス業務を構築するという構想がある。
宝金さんは「それこそが“本当のERP”と言えるものだ」と語る。

1つ1つの情報を個別に処理するだけでは表層的な捉え方しかできないが、それを複合的に見ることができれば、判断の軸が増え、いわば三次元で判断できるようになる。顧客のデータベースとして完結するためには、まだfreeeにも足りない機能が多いが、更新速度は速く、今後、赤坂共同の税理士事務所、社会保険労務士事務所、名護オフィスの三者をつなぐデータベースの構築ができるようになることを期待しているという。

酒井麻子 氏

複雑で非合理的な税理士と社労士の職域争い

赤坂共同事務所に併設する社会保険労務士事務所を立ち上げたのは、もともとスタッフとして働いており、2012年に社会保険労務士の資格をとった山田奈々恵さんだ。
事務所には税理士・会計士はすでにたくさんいたため、自分により必要とされる資格をとろうと、税理士ではなく、社労士の資格を取ったという。ちなみに、山田さんは名護のサテライトオフィスの立ち上げにも関わっている。

「クライアント企業の規模にもよるが、単に社外の社労士と提携するのではなく、会計事務所内にも社労士が必要だ」というのは、宝金さんの昔からの考え方だ。
というのも、税理士には税理士にかできない業務があり、社労士には社労士にしかできない業務があるものの、その住み分けには合理的でない部分があるからだ。

たとえば、給与計算を社労士がおこなっている場合、税理士が法定調書合計表を作成するためには、社労士が持っているデータと同じ情報が必要になる。反対に、給与計算を税理士がおこなっている場合も、社労士が社会保険手続をするためには、税理士が持っているデータと同じものが必要になる。同じデータをそれぞれの事務所で管理する必要があり、二度手間が生じてしまうのだ。

そのとき、社内に社労士がいて、必要な情報が1つのデータベースにまとまっていれば、ムダな作業が減らせ、迅速な対応が可能になる。クライアントの視点で見ても、窓口が1つに集約されるので利便性は非常に高い。

「実際には、税理士・会計士のもとには税務まわりのご相談だけでなく、社会保険関係や給与計算、人事の悩み事まで幅広い相談が寄せられます。しかし、私たちはその専門家ではありませんから、お金をいただけるような関係にはなかなかなりません。とはいえ、やはり悩み事は悩み事ですから、どうにかクライアントの力にはなってあげたい。となると、社外の社労士の先生をご紹介するか、自社に社労士を置いて対応するかということになります。後者であれば、トータルなサポートが提供できるというわけです」

担当者を困らせる大変だけど大切な給与計算業務

給与計算は、会計や人事労務のベースともいえる業務だ。給与計算がきちんとしていなければ、その後の社会保険も会計帳簿も混乱状態に陥ってしまう。決しておざなりにはできない部分である。
しかし実際には、経理部に人員を多く割けない中小企業が社内で給与計算をおこなっていれば、担当者が四苦八苦しながらやっていることがほとんどだろう。
もしアウトソーシングするとしても、外注費という負担が重くのしかかってくることになる。

一方で、会計事務所や社労士事務所では、給与計算の大切さをどれだけ認識していても、複雑で大変な業務であるからには、その代行を安易に請け負うことが難しいという側面がある。

「つまり現状では、企業が自社で給与計算をする場合はお金のコストが発生し、会計事務所・社労士事務所で代行する場合は、時間や人手というコストが発生しているわけです。となれば、やはりERPの考え方で対処するべきだろう」と宝金さんは指摘する。「従業員の勤怠から、経費精算の領収書、売上や仕入れの金額、さまざまなデータを1つにまとめて管理できるようにしていくしかない」

ERPシステムを導入してコスト全体を圧縮できれば、お金にしろ時間や人手にしろ、ネックになっていたコストそのものが問題ではなくなるというわけだ。
現状では、宝金さんの理想とするようなERPソフトにはまだ出会えていない。たとえば、赤坂共同でも使っている人事労務ソフトの1つは、人事・労務・就業・社会保険・電子申請関連業務がオールインワンでおこなえる社労士向けのプロユースソフトだ。フレックスタイム制や変形労働時間にも対応しており、代理申請までできるため、社労士にとっては利便性が高い。
しかし、社労士のための仕様なので、税理士の合計表の電子申請ができるようにはなっていないのだ。

「現状では、一長一短があるソフトがバラバラと並立している状態ですね。勤怠管理にしても、タイムカードの集計はどのソフトでもできますが、それだけではまだ不完全で、従業員と承認者のやり取りを上手にできるような仕組みはなかなかありません。従業員と承認者のあいだで残業の申請や遅刻の判断などのやり取りができ、それを給与計算と連動させないと、本当の意味で給与計算ができるソフトにはならないでしょう。その仕組みを作るのは難しいかもしれないけれど、ERPで承認機能と差し戻し機能が作れれば、少しは違うんじゃないかと思います」

すべてのバックヤード業務はアウトソースが可能な時代に

宝金さんがそうした問題点の解決策の1つになるのではないかと期待しているのが、会計freeeと人事労務freeeである。

「人事労務freeeによってお客様の給与計算や社会保険事務が可能になれば、それを会計freeeと連動して、税理士が税務申告の代理申請をするときのデータとして用いることができます。そしてさらに、社労士もそのデータをレビューしたうえで代理申請が完了する。会計freeeと人事労務freeeで、両方の立場から税理士と社会労務士が代理申請できるようになるのが理想ですね。というか、そうなってもらわないと困る(笑)。そして人件費や従業員数、組織図、会計データといったさまざまな情報をクロスオーバーさせて分析できるようになれば完璧でしょう」

すでに赤坂共同事務所では、少しずつその活用を始めている。会計freeeを使って東京のオフィスと名護のサテライトオフィス、そしてクライアント企業でデータベースを共有し、請求書の発行や経費精算、帳簿作成、口座を預かっての支払い代行、給与計算という「丸抱えのバックヤード」の提供を実現しているのだ。

「バックオフィス全般のサポート、ほとんど秘書機能にも近いサポートですね。そうすると、もはやスモールビジネスではバックオフィス業務に対して人を雇う必要がなくなりますから、企業の仕組みも変わってくるでしょう。採用コストや育成コストもかからず、人を雇うよりも安く効率よくバックオフィスを構築でき、労働問題も起きません。我々としても、きちんと報酬をいただけるサービスとして提供できます」

この新しい形のアウトソーシングが進めば、クレジットカードや電子マネーの活用で現金取引を減らし、そのうえで帳簿をモニタリングして申告業務につなげるという効率化も図りやすくなる。これまでは仕事を増やそうと思えば、事務所の人員も増やすほかなかったが、人を増やさなくてもできる仕事のボリュームも大きくなる。

「さらにその先は、同じ仕組みのなかで融資調達や税務調査ができるようなインフラとしても機能するのではないかと考えています。たとえば税務調査の場合なら、税務署の職員にIDを渡して見てもらうだけで、税理士が立ち会う必要すらなくなってしまうかもしれない。証票もすべてデータのなかに入っているわけですからね。そういう部分ではITやクラウドの仕組みを活用して効率化を図り、その先の税務上の解釈やクライアントの不利益にならないような交渉という部分では人間がきちんと責務を果たす。テクノロジーの進歩によって、士業の現行の体制までもが変わっていく未来が待っているかもしれません」

組織運営、どうしてる?赤坂共同事務所の「戦略人事」の取り組み

業務時間の10%を「学び」の時間に

「戦略人事」とは、いわば他社との差別化や優位性を生み出すために、「経営」の視点からおこなう人事のこと。たとえば、「うちでも女性登用を進めよう」と考えたときに、単に女性を増やすのではなく、「女性を登用することで、どのようなマーケットを攻略できるのか」「市場でどう優位性を発揮できるのか」ということを考え、経営の立場からヒトとカネを活用するのが「戦略人事」である。赤坂共同事務所の場合、名護のサテライトオフィスがそれに当たる。記帳代行や給与計算という業務を包括的におこなうことで企業のニーズを満たしつつ、税理士・会計士はより付加価値の高い業務に集中できる。まさに市場での優位性を生み出す策だと言えるだろう。
そんなサテライトオフィスだが、今では月次業務だけでなく、バックオフィス業務のスペシャリストという立ち位置を活かした次の取り組みも始まっている。まだ構想段階ではあるが、クライアントの事務まわりの初期設定を手がけるコンサルティングや、名護を拠点とする税理士法人化等が見据えられているのだ。そのために、業務時間の10%に当たる48分を日々、スタッフが勉強できる時間として確保、簿記や税務、freeeの使い方等を学んでスキルアップする時間に充てているのである。リモートワークでは従業員の管理が難しいが、赤坂共同事務所ではこんな取り組みからも、従業員のロイヤルティを高め、生産性を上げる工夫が垣間見える。

Company Profile

税理士法人 赤坂共同事務所

東京都港区赤坂2-23-1 アークヒルズフロントタワー10F
03-5545-7630
税理士法人赤坂共同事務所では、沖縄県名護市にサテライトオフィスを設けているほか、港区赤坂の事務所には社会保険労務士事務所、司法書士事務所も併設。各分野の専門的知識を要する業務から、一般的な税務・会計知識まで、クライアントのニーズや要望に合わせた付加価値の高いサービスをワンストップで提供している。

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